ハルヒはチョコを食べているときも
ひとつ気がかりなことがあった。
それは、チョコを渡すタイミング。
ここまで鏡夜の用意してくれたチョコが豪華だと
自分の粗末なチョコを渡すタイミングがつかめない。
そんな心配が表に出たのか、ハルヒは急に食欲が無くなった。
「ハルヒ??もういいのか??」
「ちょっと休憩させてください。一気に食べすぎちゃって。」
「じゃあ、今水持ってくるから。」
鏡夜は部屋の奥へと向かった。
鏡夜は水を持って戻ってくるとき、
ふとハルヒのかばんの中にピンクのリボンを見つけた。
鏡夜はにやりと笑うと、それをそっと抜き取り、ポケットにしまうと
ハルヒの元へと戻った。
「ハルヒ、水もってきたぞ。」
「ありがとうございます。」
ハルヒはごくごく水を飲む。
鏡夜はそっとポケットから小さな箱を取り出すと
二ヤリと笑みを浮かべていった。
「ハルヒ、これは何だ??」
ハルヒは思いっきり咳き込んで
飲んでいた水を吐き出しそうになった。
「ゴホッ…!?なんで鏡夜先輩がそれを持ってるんですか!?」
「質問に答えろ。これはなんだ??」
鏡夜は分かっているのにわざと聞く。
「返してください!!」
ハルヒが鏡夜の腕に飛びつくと
鏡夜はそれをひらりとかわす。
「っ!!ちょっと!!」
そんなやり取りが何回か続くと、鏡夜も気が済んだようで
隣の部屋のベッドに腰掛けた。
「鏡夜先輩ってば!もういい加減にしてください!」
ハルヒはふくれっつらのまま、鏡夜の隣に座る。
「これは駄目なんです!」
ハルヒは鏡夜の腕から箱をもぎ取ると
自分の後ろに隠した。
「ハルヒ、どうしてそんなに嫌がるんだ??
それは俺にだろう??」
ハルヒは顔を真っ赤にする。
図星、と明らかに言っているようなものだ。
「いや、あのこれは…」
「お前の作ったものなら、世界一おいしいと思うがな。」
そこまでいわれると、ハルヒも隠し続けられなくなって
しぶしぶ鏡夜にチョコを渡した。
鏡夜はリボンをほどき、箱を開ける。
そこには黒白二個ずつのトリュフが入っていた。
「旨そうじゃないか」
鏡夜は一粒つまむとそれをまじまじと見る。
何か思ったか、鏡夜はハルヒの口の中に
白いトリュフを放り込んだ。
「んっ!?」
鏡夜はハルヒの唇の上に、自分の唇を重ね合わせ
ハルヒの口の中へと舌を入れていく。
二人の口いっぱいにチョコの甘さが広がった。
鏡夜が唇を離すと、ハルヒは顔を真っ赤にしていった。
「っ…!何するんですか!?」
「普通に食べるより、こっちのほうが旨いだろう。」
「…最悪!」
ハルヒはそっぽを向いた。
そんなハルヒをなだめるように鏡夜は言った。
「わかったよ、もうしないから。」
「本当ですか??」
疑り深い目で鏡夜を見つめる。
「そうだな。
もう一個のチョコを食べさせてくれるなら…な。」
「はぁ!?」
ハルヒはまた顔を真っ赤にして、
大きな目を見開いた。
「そうか、嫌なのか。
それじゃあさっきのをもう一回だな。」
「いやいや!やらせていただきます!」
半強制的にうなずかされたハルヒは
箱からチョコをつまみ取ると、鏡夜の口元へと運んでいく。
すると鏡夜はすんなりとチョコを食べたのであった。
なんだ、よかった。
ハルヒが思ったのもつかの間
いきなり鏡夜がハルヒを押し倒し口付けをしてきた。
さっきと同じ、深くて甘いキス。
「もうしないっていったのに。」
「白も食べたら黒も食べたいだろう??」
鏡夜はハルヒの上にかぶさったまま
話し出した。
「最近ハルヒに会えなかったからな。
足りないんだよ。」
「だからってこんなこと…」
「嫌か??」
「というか、怖いっていうか…
こういうの初めてなんで。」
ハルヒは鏡夜の顔を見て、ふと昔を思い出した。
「そういえば、高校のときもこんなことありましたね。」
「そうだったな。」
「あの時の鏡夜先輩の目は本気じゃなかったです。」
あの時の目は、自分を気づかせようとしてくれた目。
「ほう。」
「でも今日は…」
本気なんですね。
まっすぐ自分を見つめていて
瞳の奥にはあふれ出しそうなほどの優しさがある。
「こんな無理矢理にお前を従わせるつもりは無いが。
嫌なら嫌とはっきり言っていいんだぞ??」
「ちょっと怖いけど、嫌じゃないです。」
鏡夜先輩ならきっと
自分を大切にしてくれるから。
心のそこから大丈夫って思える。
「何かいっておきたいことは??」
鏡夜の質問に、ハルヒはいろいろ考えた末、こういった。
「あの…電気消しませんか??」
鏡夜はにやりと笑うと、ハルヒの言葉を封じるように
ハルヒに口付けた。
やっぱり何を言っても無駄か。
ハルヒは心の中でそう思っていたけど
今日ぐらいは許してあげようかと思った。
そのキスの味は
どんなチョコよりも、優しくて甘いものだったから…