俺が初等部に入学したての夏。
特活の時間、学院の敷地内の森に行くことになった。
「自由時間にするから、チャイムが鳴ったらここに戻ること!!いいですか??」
「「「は-い!!」」」
先生の指示に従い、各自好きなように行動しだした。
でも俺は木陰で本を読むばかり。
ふと視線を上げると、網をもってセミ採りしているグループが目に入った。
「いいなぁ」
そう思いつつも、セミ採りなんかやったら父に怒られてしまう。
それに俺はセミ採りなんかやっている暇があれば勉強したかった。
そんな俺のところへ、セミ採りをしていたクラスメートがやってきた。
「鏡夜くん鏡夜くん!!」
「どうしたの??」
「鏡夜くんはセミ採りしないの??」
「うん。」
「どうして??楽しいのに。」
──どうして?
そんなのわからない。
でもできないんだ。
そうきまっているから。
たぶん。
「僕はいいよ。」
「ふうん。じゃぁこれ持っててよ。僕たち、これから木登りするから」
渡されたのはセミが入った虫かご。
「いいよ。」
「ありがとう!!」
そういって男の子はかけていった。
「そんなに楽しいのかなぁ?」
俺は虫かごをまじまじと見た。
透明な羽をふるわせうるさい鳴き声を発している茶色の虫。
俺はそっと虫かごを開けてセミをつかんだ。
「わっっ!!」
つかんだ場所が悪かったのか、セミがばたついた。
その拍子にセミをはなしてしまった。
真っ青な空へ飛んでいくセミ。
「どうしよう...」
素直に謝るか、それとも...
──捕まえる??
「よし。」
俺は橘から網をもらって、セミを捕まえることにした。
「きょ鏡夜様、大丈夫ですか!?」
「だいじょ-ぶ」
授業が終わるまであと50分。
俺は虫かごを肩から下げ、森へと進んでいった。