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2026/06/12 23:07 |
隣の宝物 8
ここからのお話は、クリスマス後のエピソードとなります。
おまけです^^

 


その二人の男女は、寒空の下、神社へ向かう行列に並んでいた。


二人のそばには、黒いスーツを身にまとった三人の男が


こそこそ隠れていた。


 


「…まだか。」


「せっかちですね。こういうのはゆっくり待つものなんですよ。」


 


二人のうちの男は、なんだか不機嫌な様子だった。


 


「大体、こんなに寒いのにまだ待たせるのか。


 この神社はどうなっている。」


 


彼は彼女に話しかける。


 


「嫌なら帰っていいですよ。」


彼女は言った。


「それじゃあ、約束が果たせないだろう。」


「じゃあ待っててください。」


 


はぁ、と彼は大きなため息をついた。


 


* * *


 


あれはクリスマスの朝。


 


「だから連絡しなかったことは昨日謝ったじゃないか。」


「ほんとに反省してるんですか?」


 


彼女は、彼を睨む。


 


「…じゃあ何をすればいい。何でもしてやる。」


 


彼女は急に笑顔になった。


 


「言いましたね!今言ったこと忘れたとか言ったら承知しませんよ。」


 


彼女はコートを羽織る。


 


「さ、行きますよ。」


「何処へ。」


「決まってるじゃないですか。」


 


彼女は、彼にコートを手渡した。


 


「何でもしてくれるんですよね?」


 


彼女はにっこりと笑った。


 


* * *


 


「…そういえば、あの時一緒に出かけてやったよな。」


「ええ。」


「約束はそれで果たされたんじゃないのか?」


 


彼女は彼を見る。


 


「何でもしてくれるって、回数制限あるんですか?」


「…。」


 


確かに、回数を指定した覚えはなかった。


彼は目頭を押さえる。


 


彼女は、クスクス笑った。


 


「冗談ですよ、これで最後にします。」


 


彼は安堵し、彼女は列の先の見た。


 


「あ、なんか配ってる。」


 


神社の巫女が何か飲み物を配っていた。


 


「どうぞー。」


 


手渡されたのは甘酒。


 


「…なんだこれ。」


「甘酒って言うんです。知らないんですか?」


「普通、こんなもの飲まないだろう。」


 


彼女は、甘酒を一口飲んだ。


 


「ふぅ…あったまるなぁ。」


「美味いのか。」


「甘くて美味しいですよ。酒粕を溶かしたものなんです。」


 


彼は顔をしかめつつも、一口飲んだ。


冷えた体の中を、甘酒がゆっくりと伝っていく。


体の心から温まるような感覚を味わっていた。


 


「ね、美味しいでしょう?」


「不味くはないと思うが…」


 


とかなんとか言いつつも、彼は全て飲み干してしまった。


 


「なんだ、美味しいんじゃないですか。」


「まぁ、飲めないこともない。」


 


そんな彼をにっこりと見つめ、彼女もコップの残りを飲み干した。


少しずつ、列が動いていく。


 


「もうすぐかな?」


 


彼女はぴょんぴょん背伸びをして、前を見る。


そんな姿が可愛くて、思わず抱きしめたくなった。


 


「落ち着けハルヒ。」


「別に落ち着いてますよ。


 鏡夜先輩は背が高いからいいじゃないですか。」


 


そういえば、さっきから目線を感じる。


橘さんたちじゃなく、もっと痛い視線。


 


「…鏡夜先輩。女の子にものすごく見られているような気が…」


「そうか?」


 


彼はもう慣れているのだろうか。


さほど気にしてないらしい。


 


「なんか、自分と不釣合いとか思われてないですかね。


 恋人じゃなくて、いとことか。」


「なんだ、そんな心配をしているのか。」


 


彼は彼女をぐっと抱き寄せた。


 


「ちょ、ちょっと、鏡夜先輩!?」


「嫌なのか。」


「っていうか人前ですよ。」


「それがどうした。」


 


彼は一呼吸おいていった。


 


「俺にとって大切なのは、お前だけだ。」


 


彼は彼女の耳元で囁く。


 


「もう、恥ずかしいこと言わないでくださいっ。」


 


彼女は赤面していた。


 


「どうして鏡夜先輩はそんな恥ずかしいこと平気で言えるんですか。」


「ハルヒが好きだからに決まっているだろう。」


「なんか違う人みたいですよ。」


「そうか?」


「甘酒で酔ったんじゃないですか?」


「そんなやわじゃない。」


 


彼女は恥ずかしがりながらも、彼の腕をしっかりと掴んでいた。


彼には、それが嬉しくて、しばらく二人はそのままだった。


 


そんな二人の空の上に、除夜の鐘が響き渡る。


 


「あ。」


「あけましておめでとう、ハルヒ。」


「おめでとうございます。鏡夜先輩。


 今年もよろしくお願いしますね。」


「あぁ。よろしくな。」


 


だんだんと列が前へ進んでいく。


 


 


「やっとお参りできますね。」


「そうだな。」


 


彼女は財布から小銭を出す。


それにつられて彼も小銭を出した。


 


本当は、神頼みとかはしない主義なんだが。


 


二人の番になると、後ろの客の所為もあり、


すばやく参拝せざるをえなかった。


しかし、彼が終わった頃も、彼女はまだ手を合わせて祈っていた。


 


「ハルヒ、随分長かったが何をそんなに願っていたんだ?」


「こういうのは言っちゃいけないんです。


 言ったら叶わなくなっちゃうんですよ。」


 


彼女は鼻歌を歌いながら上機嫌で歩いている。


 


「お前こそ、どうかしたか。なんだか壊れてるんじゃないか?」


「そんなことないですよ。さ、帰りましょ。」


 


彼の先を歩く彼女を見て


彼は、ふと思い出したように言った。


 


「そうだ。ハルヒ、今日は暇か?」


彼は唐突に聞いてきた。


「えぇ。父とおせちを食べた後は暇ですけど…」


「じゃあ出かけるぞ。」


 


「は!?」


 


「なにか不満かな。」


 


彼は得意の魔王様スマイルを見せる。


 


「いえいえ、とんでもございません。」


 


「それじゃあ11時ごろに迎えに行くからな。」


「あ、わかりました。」


 


「よし、帰るぞ。」


 


上機嫌になった彼は、彼女の手を握ったまま、待機させてある車の横を通りすぎ


彼女の家に向かって歩き出した。


 夜空の星の光が、二人を優しく包んでいく…


 

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2008/12/31 22:59 | Comments(0) | TrackBack() | 隣の宝物

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